PM の 1 on 1|部下の本音を引き出す質問テンプレ

「最近どう?」で終わらない 1on1 の型。現役コンサルマネージャーが実践する「困りごと → 成長実感 → キャリア相談」の 3 軸質問テンプレートで、部下の本音を引き出しチームパフォーマンスを高める方法を解説します。

「最近どう?」「特に問題ないです」——この 3 秒で終わる 1on1、あなたのチームでも起きていませんか?

結論から言います。1on1 が機能しない最大の原因は「質問の設計がない」ことです。 逆に言えば、3 軸の質問テンプレートさえ手元にあれば、週 30 分の 1on1 はチームの課題発見・モチベーション維持・キャリア支援を同時に達成できる最強のマネジメントツールになります。

本記事では、現役コンサルマネージャーが実践する「困りごと → 成長実感 → キャリア相談」の 3 軸質問テンプレートと、部下が自然と本音を話したくなる聞き方の技術を解説します。


なぜ 1on1 は失敗するのか

多くの PM が 1on1 を「進捗確認の延長」として設計してしまいます。その結果、以下の 3 つのパターンに陥ります。

パターン典型的な状況問題の本質
①進捗報告で終わる「今週の課題の進み具合は?」だけで 30 分消費タスク管理ツールで代替できる。1on1 の価値がない
②沈黙を恐れる「何か困ってることある?」→ 「ないです」→ 即終了沈黙を埋めようとすることで、部下が考える時間を奪っている
③前回の話が繋がらない毎回ゼロから始まり、継続的な関係構築ができない記録がなく「先月も同じ話をした」状態が続く

1on1 の基本設計|頻度・時間・場所・姿勢

質問テンプレートを使う前に、1on1 の器を正しく設計します。

頻度と時間

設定推奨理由
頻度週 1 回(または隔週)月 1 回では問題が発覚したとき手遅れになる。週 1 回なら小さな違和感を早期にキャッチできる
時間30〜45 分短すぎると深掘りできず、長すぎると構造が崩れる。まず 30 分で始め、必要なら延長
曜日・時刻固定(毎週月曜 10 時など)変動すると「今週はいいか」と後回しになる。カレンダーでブロックを確保

場所と環境

  • 個室またはオンライン:他の人に聞かれない環境が本音を引き出す前提条件
  • ノートPC を閉じる:スクリーンがある間は人は「仕事モード」のまま。画面を閉じることで対話モードに切り替わる
  • 飲み物を用意する:コーヒー・お茶一杯あるだけで場の温度が下がる(特に初回)

PM の心構え

1on1 で最も重要な姿勢は「共感的傾聴(Active Listening)」です。

  • 部下が話している間は絶対に遮らない
  • 「でも」「それは違う」を口にしない
  • 評価・判断を口に出す前に「もう少し聞かせて」と促す

3 軸の質問テンプレート|本音を引き出す構成

1on1 の質問は「困りごと → 成長実感 → キャリア相談」の 3 軸で構成します。この順番には意味があります。まず足元(困りごと)を解消し、その上で上を向ける(成長・キャリア)設計です。

軸 1:困りごと・ブロッカー|業務課題を引き出す

最初の 10〜15 分は「今、何が一番困っているか」を引き出すことに使います。

基本の質問

タイミング質問狙い
開始直後「今週、一番ヘビーだったことは何ですか?」「元気です」で終わらせない。具体的な経験を語らせる
困りごとが出たら「それはいつ頃から気になっていましたか?」課題の発生時期を確認し、早期発見できたかを学ぶ
原因を深掘り「その原因はどこにあると思いますか?(本人の目線で)」本人の見立てを引き出す。解決策は次のステップ
PM の支援を確認「私が今すぐできることで、何かありますか?」「報告を聞いて終わり」ではなく、PM が動く姿勢を示す

ブロッカー特化の質問(週次で使えるセット)

□ 今、手が止まっていること・判断できずにいることはありますか?
□ 他のメンバーや部署との連携で摩擦を感じていますか?
□ 「本当はこうしたいが、できていない」と感じることがあれば教えてください
□ 私(PM)の行動で、あなたの仕事をやりにくくしていることがあれば聞かせてください

最後の質問は勇気がいりますが、PM 自身への率直なフィードバックを引き出す最強の問いです。


軸 2:成長実感・フィードバック|モチベーションを高める

次の 10 分は「うまくいったこと・学んだこと」に焦点を当てます。困りごとだけ話してもらうと 1on1 は「ネガティブな場」になります。成功体験を明示的に取り上げることで、自己効力感を高め、次への意欲を引き出します。

基本の質問

タイミング質問狙い
成功体験を引き出す「今週、自分でうまくできたと思う場面はありましたか?」謙遜で埋もれがちな成功を可視化する
具体化する「なぜうまくいったと思いますか?ご自身の中で工夫したことは?」成功要因を言語化させることで再現性が高まる
成長を確認する「3 ヶ月前の自分と比べて、変わったと思うことはありますか?」短期では見えにくい成長を長い目線で確認する
フィードバックを渡す「私が見ていて、特に〇〇の場面での△△が印象的でした」具体的な行動ベースでポジティブフィードバックを届ける

成長サポートの質問

□ 今、一番身につけたいスキルや知識は何ですか?
□ 勉強や学習のために、会社や私から支援してほしいことはありますか?
□ 「この人のここを真似したい」と感じている人は社内外に誰かいますか?
□ 今の仕事で、一番やりがいを感じる瞬間はどんなときですか?

軸 3:キャリア相談|中長期的な関係を築く

最後の 5〜10 分はキャリアの話です。ただし毎回深掘りする必要はなく、月に 1〜2 回のペースで構いません。

基本の質問

タイミング質問狙い
将来像を確認する「1 年後、どんな仕事をしていたいですか?」漠然とした「成長したい」を具体化する
現在とのギャップ「今の仕事は、その方向に近づいていると思いますか?」現状に対する本音の評価を引き出す
PM ができること「私が経験の場を作るとしたら、何に挑戦させてほしいですか?」ネクストアクションを共に設計する
不安を確認する「このプロジェクト・チームで、心配していることはありますか?」表面に出ない潜在的な不満・不安を引き出す

「本音を引き出す」聞き方の 4 技術

質問がよくても、聞き方が間違っていると本音は出てきません。

技術 1:沈黙を恐れない

部下が考えているとき、PM が沈黙を埋めようとすると「考える時間」を奪います。質問の後は 5 秒待つ。それでも沈黙が続くなら「ゆっくり考えてください」と声をかけるだけで十分です。

技術 2:クローズド質問をオープン質問に変換する

クローズド(NG)オープン(OK)
「うまくいってる?」「今週、どんな手ごたえを感じましたか?」
「困ってること、ある?」「今、一番頭を使っている課題は何ですか?」
「問題ない?」「仮に一つだけ改善できるとしたら何ですか?」

クローズド質問(Yes/No で答えられる質問)は会話を止めます。オープン質問は会話を広げます。

技術 3:「反射(Reflection)」で理解を確認する

部下が話したことを自分の言葉で言い直します。

部下:「あのプロジェクト、なんか自分のやりたいことと違う気がして...」
PM:「なるほど。仕事の方向性が自分の志向と合っていない感覚があるということですね?」

これにより「ちゃんと聞いてもらえている」という安心感が生まれ、さらに深い本音が出てきます。

技術 4:「解決策より先に感情を受け取る」

部下が不満を話したとき、PM は即座に「じゃあこうしよう」と解決策を出しがちです。しかしまず感情を受け取ることが先です。

× 「それは大変だったね。じゃあ来週から○○にしよう」
○ 「それは大変だったね。その状況、もう少し詳しく教えてもらえますか?」

解決策が正しくても、感情が受け取られていないと部下は「聞いてもらえた」とは感じません。


1on1 の記録と次回への接続

1on1 を「記録なし」で終わらせると、次回ゼロから始まり信頼の蓄積ができません。

記録テンプレート(5 分で書ける最小構成)

# 1on1 記録 — [氏名] / [日付]

## 今日のトピック
- 困りごと:[要約]
- 成長・好調点:[要約]
- キャリア・その他:[要約]

## PM のアクション(期日付き)
- [具体的なアクション] — [期日]

## 次回確認事項
- [前回の継続課題]

ポイント:

  • 記録は 1on1 終了直後に 5 分で書く(翌日になると細部が消える)
  • PM のアクションを必ず書き、次回の冒頭で必ず確認する
  • 相手のアクションを「宿題」として課すのは最小限に(義務感が生じると 1on1 が苦痛になる)

よくある失敗 5 選

メリット

  • 週 1 回 30 分の固定枠を確保している
  • 話す比率は部下 80%:PM 20% を意識している
  • 前回の PM アクションを冒頭で必ず確認している
  • キャリア・感情の話を定期的に引き出している
  • 困りごとは感情を受け取ってから解決策を提案している

デメリット

  • ❌ 失敗 1:進捗確認で終わる(課題状況だけ聞いて終了)
  • ❌ 失敗 2:沈黙が怖くて PM がしゃべり続ける
  • ❌ 失敗 3:毎回ゼロから始まり前回の話が繋がらない
  • ❌ 失敗 4:感情を受け取る前に解決策を押しつける
  • ❌ 失敗 5:1on1 を「評価面談」と同じ位置づけにする

失敗 5 の補足:1on1 は評価のための場ではありません。1on1 で話した内容が評価に使われると感じた瞬間、部下は本音を話さなくなります。「1on1 は対話の場、評価面談は別の場」を明確に分けることが、心理的安全性の前提です。


FAQ

Q1. 1on1 はオンラインでも効果がありますか?

A. カメラオンで個室環境であれば、対面と遜色ありません。ただしオンラインでは沈黙が「接続が切れた?」と誤解されやすいため、「少し考えます」「ちょっと待ってください」のひと言を互いに使うルールを最初に決めておくと良いです。

Q2. 部下が複数いる場合、全員に週 1 回は無理です。どうしますか?

A. 5〜6 名以上であれば隔週で十分です。ただし、課題を抱えているメンバーや新入りメンバーは週 1 回を優先します。1on1 の頻度はメンバーの状態に応じて動的に調整します。

Q3. 1on1 でハラスメントや深刻な相談が出た場合はどうしますか?

A. まず「話してくれてありがとう」と受け止め、詳細を聞きます。その後、社内の HR・相談窓口と連携するか判断します。PM が一人で抱え込まないことが鉄則です。クライアント期待値マネジメントと同様、「重大な問題を一人で解決しようとしない」姿勢が信頼を守ります。

Q4. 1on1 の内容を本人に共有すべきですか?

A. 「PM のアクション事項」は明確に共有します。一方で感情・キャリアに関するメモは、相手の同意なしに第三者(上司・HR)に共有しないことが原則です。「この内容は二人だけで」と最初に合意しておくと安心感が生まれます。

Q5. 質問テンプレートを毎回使うと不自然になりませんか?

A. テンプレートはあくまでチェックリストです。毎回ロボットのように読み上げるのではなく、前回からの流れや最近のチームの状況に応じて取捨選択します。テンプレートは「忘れ物防止」のためのバックアップです。


まとめ|週 30 分で変わるチームのパフォーマンス

1on1 の本質は「部下の本音を引き出す場を仕組みで作ること」です。

  • 困りごと(ブロッカーの早期発見)→ PM がすぐ動ける
  • 成長実感(自己効力感の強化)→ モチベーションを高める
  • キャリア相談(中長期の信頼構築)→ 離職リスクを下げる

「何を聞けばいいか分からない」から「質問テンプレートがあれば迷わない」へ。この一歩が、チームとの関係を根本から変えます。

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