クリティカルパスの計算方法|PERT 図と最早・最遅で最短工期を求める

クリティカルパスの計算方法を、具体的なネットワーク図(PERT 図・アローダイアグラム)を使って手順で解説。フォワードパスで最早(ES/EF)、バックワードパスで最遅(LS/LF)を求め、トータルフロートがゼロの経路=クリティカルパスを特定します。トータルフロートとフリーフロートの違い、計算の落とし穴まで、例題で手を動かして理解できる形でまとめました。

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「クリティカルパスという言葉は知っているが、いざ自分のプロジェクトで計算しようとすると手が止まる」——本記事はその状態を、例題で手を動かしながら解消します。結論から言えば、クリティカルパスは ① 作業と依存関係を整理 → ② ネットワーク図(PERT 図)を描く → ③ フォワードパスで最早(ES/EF)を出す → ④ バックワードパスで最遅(LS/LF)を出す → ⑤ トータルフロートを計算し、ゼロの経路を特定する という 5 ステップで、誰でも同じ答えにたどり着けます。なぜなら、クリティカルパスの計算は「前から足す・後ろから引く・その差を取る」という機械的な手順であり、コツを掴めば感覚ではなく計算で確定できるからです。

たとえば「工期を 2 日縮めたい」と言われたとき、どの作業を短縮すればいいかは勘では決められません。クリティカルパスを求めれば、短縮すべき作業と、いくら急いでも工期に効かない作業がはっきり分かれます。本記事では、6 つの作業からなる小さなプロジェクトを題材に、実際に数字を追いながらクリティカルパスを求めます。作業の洗い出し(WBS)がまだの方は「WBS の作り方 完全ガイド」を先に読むと、この記事の題材づくりがそのまま実務につながります。

クリティカルパスとは|最短工期を決める「余裕ゼロ」の経路

クリティカルパス(Critical Path=重要経路)とは、プロジェクトの開始から完了までの経路のうち、所要期間の合計が最も長い経路のことです。ネットワーク図には複数の経路が存在しますが、その中で一番時間がかかる経路がプロジェクト全体の最短工期を決めます。すべての経路が終わらないとプロジェクトは完了しないため、「最も長い経路にかかる時間」=「最短でも必要な時間」になるからです。

クリティカルパス上の作業には 時間的な余裕(フロート)がまったくありません。そのため、この経路の作業が 1 日でも遅れると、プロジェクト全体の完了も 1 日遅れます。逆に言えば、工期を短縮したいならクリティカルパス上の作業を短縮するしかありません。

PERT 図(アローダイアグラム)とは|計算の土台になる工程図

クリティカルパスを計算するには、まず作業の順序関係を図にします。この図が PERT 図(Program Evaluation and Review Technique)で、日本の実務や情報処理試験では アローダイアグラム(新 QC 七つ道具の一つ)とも呼ばれます。

工程図の描き方には 2 つの流派があります。混同しやすいので、最初に整理しておきましょう。

表現方式作業の表し方結合点(ノード)の意味よく使われる場面
AOA(アローダイアグラム)矢印=作業作業の開始・終了イベント情報処理試験・製造/建設の工程管理
AON(プレシデンスダイアグラム)ノード=作業PMBOK®・多くの PM ツール

本記事では、手順が追いやすい AON(作業をノードで表す方式) を使って計算を進めます。考え方は AOA でも同じで、AOA では「結合点時刻」として最早結合点時刻・最遅結合点時刻を求めますが、前から足して後ろから引くという計算の骨格は変わりません。

例題|6 つの作業でクリティカルパスを求める

言葉だけでは腹落ちしないので、具体的な例で計算します。あるシステム開発を、次の 6 作業に分解したとします。所要期間の単位は「日」です。

作業内容所要期間直前作業(先行)
A要件定義3なし(開始)
B基本設計2A
C基盤構築3A
D詳細設計2B
E実装3C, D
Fテスト2E

この関係を図にすると、A の後で B(設計側)と C(基盤側)に分岐し、E で合流して F で終わる、という流れになります。経路は次の 2 本です。

  • 経路 1:A → B → D → E → F = 3 + 2 + 2 + 3 + 2 = 12 日
  • 経路 2:A → C → E → F = 3 + 3 + 3 + 2 = 11 日

単純に足すだけでも「最も長いのは経路 1(12 日)」と分かります。ただし実務ではこの経路数が数十本になり、目視では追えません。そこで、ES/EF/LS/LF を機械的に求める手順が必要になります。

ステップ①・②|作業を洗い出し、ネットワーク図を描く

最初にやることは、作業の洗い出しと依存関係の整理(上の作業表)と、それを ネットワーク図に落とすことです。ここが雑だと、以降の計算がいくら正確でも答えは間違います。特に「直前作業(先行)」の抜け漏れは致命的なので、WBS のワークパッケージを一つずつ「この作業を始めるには、どの作業が終わっている必要があるか?」と問いながら埋めていきます。

図が描けたら、いよいよ計算です。順番は必ず フォワードパス → バックワードパス → フロート の順に進めます。

ステップ③|フォワードパス(往路)で最早 ES・EF を求める

フォワードパスは、開始から終了へ向かって前から足していく計算です。各作業の ES(最早開始)と EF(最早終了)を求めます。ルールはこの 2 つだけです。

  • EF = ES + 所要期間
  • ES = 直前作業の EF のうち「最大値」(複数の作業が合流する点では、遅い方に合わせないと始められない)

例題を前から計算していきます。

作業所要直前ESEF(=ES+所要)
A303
B2A35
C3A36
D2B57
E3C, D710
F2E1012

ポイントは 作業 E です。E の直前は C(EF = 6)と D(EF = 7)の 2 つ。両方が終わらないと E は始められないので、ES は大きい方の 7 を採用します。ここで小さい方の 6 を選んでしまうのが典型的な誤りです。最後の作業 F の EF = 12 が、このプロジェクトの 最短工期(12 日) になります。

ステップ④|バックワードパス(復路)で最遅 LS・LF を求める

バックワードパスは、終了から開始へ向かって後ろから引いていく計算です。各作業の LF(最遅終了)と LS(最遅開始)を求めます。ルールは往路の裏返しです。

  • LS = LF − 所要期間
  • LF = 後続作業の LS のうち「最小値」(分岐する点では、早い方に合わせないと後続を遅らせてしまう)

出発点は、最後の作業 F の LF を 全体工期の 12 に置くことです。そこから逆算します。

作業所要後続LF(=後続LSの最小)LS(=LF−所要)
F21210
E3F107
D2E75
C3E74
B2D53
A3B, C30

ここでのポイントは 作業 A です。A の後続は B(LS = 3)と C(LS = 4)の 2 つ。どちらも遅らせないためには、LF は小さい方の 3 を採用します。往路で「合流点は最大値」、復路で「分岐点は最小値」——この非対称が計算のキモです。

ステップ⑤|トータルフロートを計算し、クリティカルパスを特定する

最後に、各作業の トータルフロート(全余裕) を求めます。トータルフロートとは、プロジェクト全体の工期を遅らせずに、その作業の開始をどれだけ遅らせられるかという余裕です。

  • トータルフロート = LS − ES(または LF − EF。どちらでも同じ値になる)

例題で計算すると次のとおりです。

作業ESLSトータルフロート(LS−ES)クリティカル?
A000
B330
C341
D550
E770
F10100

トータルフロートがゼロの作業をつないだ経路がクリティカルパスです。この例では A → B → D → E → F(合計 12 日)がクリティカルパスと確定しました。一方、作業 C だけはフロートが 1 日あり、1 日までなら遅れても全体工期に影響しません。これが「基盤構築(C)は 1 日の余裕があるが、設計〜テストのライン(A・B・D・E・F)は 1 日も遅らせられない」という実務的な意味になります。

トータルフロートとフリーフロートの違い

フロートには 2 種類あり、試験でも実務でも混同しやすいポイントです。

種類意味計算式
トータルフロート全体工期を遅らせずに遅らせられる余裕LS − ES(= LF − EF)
フリーフロート後続作業の ES を遅らせずに遅らせられる余裕後続作業の ES − 自作業の EF

メリット

  • トータルフロート:プロジェクト全体の締切に対する余裕。大きいほどその作業は緊急度が低い
  • フリーフロート:後続に一切迷惑をかけずに使える余裕。=自分の裁量で吸収できる遅れ

デメリット

  • トータルフロートを使い切ると、後続のフロートまで食いつぶすことがある
  • フリーフロートはトータルフロート以下(フリー ≤ トータル)になる

例題の作業 C で確認すると、C の EF = 6、後続 E の ES = 7 なので、フリーフロート = 7 − 6 = 1。C はトータルフロートもフリーフロートも 1 日で、この余裕は「C を 1 日遅らせても E の開始(=後続)にも全体工期にも影響しない、完全に自由に使える 1 日」だと分かります。

クリティカルパス計算でつまずく 4 つの落とし穴

さらに実務では、クリティカルパスは 一度求めて終わりではない ことに注意します。作業が進んで実績(遅れ・前倒し)が出ると、フロートの分布が変わり、それまで余裕のあった経路が新たなクリティカルパスに変わることがあります。フロートの小さい経路(ニアクリティカルパス)も併せて監視するのが定石です。

情報処理 PM 試験・PMP® での出題ポイント

この計算は、情報処理 PM 試験(午前Ⅱ・午後)や PMP® の頻出テーマです。試験対策としては、次の点を押さえておくと得点源になります。

  • アローダイアグラム(AOA)方式:情報処理試験では結合点(○)と矢印で表す方式が主流。最早結合点時刻・最遅結合点時刻を求め、両者が一致する結合点を結ぶ経路がクリティカルパス
  • 短縮技法との接続:クリティカルパスを縮めるのがクラッシング(資源投入でコスト増)とファストトラッキング(並行実施でリスク増)。どの作業を縮めるかの判断にクリティカルパスを使う
  • EVM との違い:クリティカルパスは「時間(工期)」の管理、EVM は「コストと進捗」の管理。混同しないこと

よくある質問(FAQ)

Q. クリティカルパスとクリティカルチェーンは違うものですか? 違います。クリティカルパスは作業の依存関係だけから最長経路を求める手法です。クリティカルチェーン法(CCPM)は、そこに「資源(人・設備)の制約」とバッファ管理を加えた発展形です。まずはクリティカルパスを理解してから CCPM に進むのが順序です。

Q. クリティカルパスは複数になることがありますか? あります。トータルフロートがゼロの経路が 2 本以上できることがあり、その場合はすべてがクリティカルパスです。どちらの経路の作業が遅れても全体が遅れるため、監視対象が増えます。

Q. Excel や PM ツールでも計算できますか? できます。JIRA・Backlog・Microsoft Project などのツールは、依存関係と所要期間を入力すればクリティカルパスを自動でハイライトします。ただし、入力した依存関係が誤っていれば結果も誤るため、「なぜその経路がクリティカルなのか」を手計算で理解しておくことが、ツールの結果を鵜呑みにしないための保険になります。

Q. ガントチャートとの関係は? クリティカルパスは「どの作業が工期を決めているか」を求める計算、ガントチャートは「タスクを時間軸に並べて見せる」表現です。多くのツールはガントチャート上でクリティカルパスを色分け表示します。作り方は「ガントチャートの作り方|Excel・JIRA・Backlog 別の手順」を参照してください。

まとめ|クリティカルパスは「前から足す・後ろから引く・差を取る」

クリティカルパスの計算方法は、① 作業と依存関係を整理 → ② ネットワーク図を描く → ③ フォワードパスで ES・EF(前から足す)→ ④ バックワードパスで LS・LF(後ろから引く)→ ⑤ トータルフロート(差を取る)がゼロの経路を特定 という 5 ステップに集約できます。合流点では最大値、分岐点では最小値という非対称さえ間違えなければ、誰が計算しても同じ答えにたどり着きます。

クリティカルパスが分かれば、「どの作業を短縮すれば工期が縮むか」「どの作業に余裕があるか」が計算で確定し、勘に頼らないスケジュール管理ができます。まずは本記事の 6 作業の例題を、何も見ずに自力で最後まで解けるようになることを目標にしてください。それができれば、実務でも試験でも、ネットワーク図の問題で迷うことはなくなります。


注釈:

  • 本記事の計算例・用語は執筆時点(2026 年 7 月)の一般的な PM 手法・情報処理試験の出題範囲に基づきます
  • PMP®・PMI® は Project Management Institute, Inc. の登録商標です

出典・参考情報

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